脂肪と統合失調症と遺伝子の関係

今回は、ナイアシンとプロスタグランジン、脂肪と統合失調症の関係をお話しします。

ナイアシンはビタミンB3ともいわれるビタミンです。

このナイアシンを大量投与すると、一過性の顔の紅潮、上半身のほてりやかゆみ症状が出現する事があります。

これをナイアシンフラッシュといいます。

栄養療法の世界では統合失調症に対してナイアシンが効果的であることは以前お話しましたが、今日は私の経験をお話します。

ナイアシンが著効した統合失調症患者

38歳のその患者さんは19歳のときに統合失調症を発症しました。
多くの薬を飲み、幾度となく入退院を繰り返しましたが、薬の副作用が怖くなり、私の所を受診しました。

ナイアシンとビタミンCを中心に処方をしたところ、ほどなくして幻聴が聞こえなくなったのです。

その後、彼はしばらく来なかったのですが、2年ぶりに来院しました。
ストレスをきっかけに幻聴が出たとの事です。

発信機が仕掛けられていて盗み聞きされている。
皆が私の悪口を言っているのが聞こえる。

これは、被害妄想を伴う幻聴であり、統合失調症の症状に合致するものです。
私は、薬はそのままの量を保ち、ナイアシンを再開したほうがいいことをアドバイスしました。

ナイアシンを処方する場合は、肝障害やナイアシンフラッシュの発症を考え、定期フォローアップが必要なこと、他に薬を処方している主治医との連携が必要なことをお話します。

統合失調症の患者はナイアシンフラッシュを起こしにくい

「ところで、今は、ナイアシンはどの位飲んでいますか?」

「今は飲んでいないのですが、最大で1日10g飲んでいました。」

「え、一時期は10gも飲んでいたのですか」

私は、ナイアシンフラッシュのことが心配でまずは多くとも1日量は3gまでにしてくれとお話していたのですが、彼は10g以上を毎日飲み続けていたのです。

それでもフラッシュの症状は一切なかったそうです。

肝機能、その他もフォロー検査をしましたが、異常を認めませんでした。

私は、ホッファー先生の言葉を思い出しました。
「 統合失調症の患者さんはめったにナイアシンフラッシュをおこさない 」

脂質代謝を専門としていた研究家デビッドホロビンも、「 統合失調症の患者はナイアシンフラッシュを殆ど起こさない。その理由はプロスタグランジンにある 」と言っています。

統合失調症患者とプロスタグランジン

統合失調症患者ではプロスタグランジン代謝がうまくいっていないことが多いのです。

ナイアシンフラッシュは、血管壁のプロスタグランジンE2の生合成により血管壁が拡張しておこります。

プロスタグランジン代謝が傷害されていれば、当然フラッシュも起こりにくいわけです。

その患者さんは、大怪我をしたときも病院にいかずがまんして、外科の先生に「 よくこんなになるまで我慢したね! 」といわれるほど、我慢強かったそうですが、これも納得がいきます。

プロスタグランジン代謝が低下している人は、炎症物質であるプロスタグランジンを生じにくいので、痛みに強いのですね。

ちなみに、統合失調症患者さんはがんになりにくいという報告もあります。(一部では否定的な意見もあります)

これも、持続した炎症が「がん」のもとであることを考えると、そういう事もありうるのかなと考えてしまいます。

このように「 プロスタグランジン代謝経路 」を理解する事で、統合失調症の症状は非常に一元的な説明がしやすくなります。

このことについて詳細を知りたい方は、デビッド・ホロビン先生の「天才と分裂病の進化論」を参照してください。

これを読むと、なぜ、ノーベル賞受賞者やその家族には統合失調症患者が多いのか?もわかります。
脂質代謝を考える上での必読書です。

統合失調症患者の脳はナイアシンの感受性が低い

さて、このようにナイアシンは、補酵素として体内の500種類以上の代謝に関わる以外に、反応の基質としての働きもあります。

なぜ、このナイアシンは統合失調症に有効であるほかに、コレステロールを下げる働きもあったりするのでしょうか。

ナイアシンの受容体には高感受性のHM74Aと低感受性のHM74があります。

この、HM74という受容体、脂肪細胞の細胞膜に存在します。

脂肪に作用して脂肪分解を抑制するわけです。

http://www.jci.org/articles/view/27160/figure/1

脳も脂肪で出来ていますから、この受容体が豊富に存在していてもおかしくないですね。

実際に、統合失調症患者の脳を解剖したところ、HM74受容体蛋白の発現は健常者と同じだが、HM74A受容体の蛋白発現は統合失調症患者で著しく減少しているのが認められました。

特に、脳の中でも前帯状皮質という、脳梁を取り巻く”襟”のような形をした領域(意思決定、共感や情動といった認知機能に関わっている)でそれが認められるそうです。

つまり、統合失調症患者の脳はナイアシンの感受性が低いので、認知機能を制御するために、多くナイアシンを必要とする事がわかっています。

統合失調症は、脂肪の感受性が低下している疾患なんですね。

分子栄養学の世界で不明だった機序はこのように、遺伝子解析によって明らかにされつつあり、研究領域は分子栄養学から遺伝子栄養学にフォーカスが移ってきています。

それでも、治療にサプリメントを用いることは変わりません。

遺伝子に基づいて作用を発現するのは栄養素だからです。

サプリを効かせる方法論 その15

・遺伝子解析を用いる
(今後、栄養素を用いる際の一般的な方法論になっていくでしょう。)

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