ドーズ・レスポンスの本当の意味

分子栄養学を学んだことのある方なら、だれでも「ドーズ・レスポンス」という言葉を聞いたことがあると思います。

今日は、そのドーズ・レスポンスについての話です。

これは、直訳すれば、「栄養の投与量と反応の関係」です。

分子栄養学において、その反応は正比例の一直線のグラフにはならず、S時のカーブを描がきます(ドーズ・レスポンスカーブと言われています)。

15年前、分子栄養学を習い始めの事に、
「枯れかけている鼻に、スポイトで水をかけてもなかなか生き返らないので、じょうろでたっぷり水をあげましょう。」
とか、
「荷車を押すとき、動きはじめにはたくさんの力が要る」
などと説明を受けたことがあります。

栄養素の効く量にはある閾値があり、その閾値まではあまり反応がないのですが、そこを超えると一気に効果がでる事を意味しています。
皆さんも聞いたことがあるかも知れませんね。

個体差とドーズレスポンス

ビタミンは欠乏症を補う最低限の量と、補酵素として働く量があります。
一般に、補酵素としての必要量は欠乏症を補う量の数倍~数十倍になります。

分子栄養学では、補酵素として栄養を使うために、
「メガドーズ」と言われるような量を使用することが特徴です。

特に水溶性ビタミンは、個体差によって、また使用目的によって、通常の数百倍の量が必要になることがあります。

特に顕著なのはビタミンCです。

ビタミンCは時に、点滴でしか達成しえない量を投与することがメリットになります。

脳は栄養の影響を受けやすい

ところで、この「個体差ドーズレスポンス」の特徴が一番顕著な臓器をご存知ですか?

こたえは 「 脳 」です。

脳の特徴について、認知症治療のエキスパート長尾和宏先生が医事新報に記事を書いていらっしゃいますので、一部引用します。

脳はネットワーク臓器なので、細分化手法だけでは当然限界がある。従って、臓器別縦割りに拘らない総合診療的な思考が必須。

私は脳の病気こそが個別化医療の対象だと思う。

がん治療や高血圧治療における使用薬剤の個体差は、せいぜい2~3倍で多くも数倍程度であろう。
一方、がん性疼痛に使用されるオピオイドの至適容量の個体差は、10倍、いや数百倍にも及ぶ。

たとえば繊維筋痛症という病気の疼痛閾値の個体差も百倍単位に及ぶはずだ。

脳というネットワーク臓器の薬剤感受性には想像以上の個体差があるはずだ。

しかもその差は、同一個体であっても病気や日にちや日内でも大きく変動することは容易に想像できる。

しかしそうした個別性を無視した認知症医療には疑問を感じる。

そうです。 脳の治療こそ、「個体差ドーズレスポンス」が大切なのです。

これは、認知症に限らず、うつや統合失調症など全ての脳疾患に言えます。

さらに、薬を用いた治療でも、栄養療法でも同じことです。

脳だけは特別に扱った方がいい

ところで、すでにお気づきかもしれませんが、脳に対するドーズレスポンスは、最初に述べたドーズレスポンスと違う点が2つあります。
ひとつは、「脳への治療の場合、ドーズレスポンスカーブの閾値のラインが、かなり手前にくる事」もう一つは、「適正量を超えると比較的早期に副作用が出る事」です。

抗うつ薬の副作用の問題がこれだけ騒がれていますので、副作用についてはご理解いただけると思いますが、

「ドーズレスポンスカーブの閾値が、手前にくる」とはどういう意味でしょうか?

実は、先ほど引用させて頂いた長尾和宏先生のお話しは、

「コウノ・メソッド」という認知症の周辺症状を抑える薬物治療法を評価する記事にて書かれたものです。

このメソッドは、開発者の河野先生自らの経験をもとに、新しい診断基準を提唱し、認知症を細かく分類していること、そして、周辺症状を抑えるために、認知症治療薬をガイドラインよりも少量使用することなどが特徴です。

例えば、アリセプトなどは、量を多くしても中核症状をほとんど改善しないのに、周辺症状が悪化するそうです。

ですから、最低限の量をだして、反応を見ながら徐々に増やしていくという考えです。

まさに、個体差とドーズレスポンスを踏まえた方法論であり、その点は非常に素晴らしいと思います。

マニュアルが公開されていますので、ご参考にして下さい。

http://www.forest-cl.jp/method_2014/kono_metod_2014.pdf

つまり、脳に対する薬は、

「効きすぎに注意しながら、おっかなびっくり増やしていった方がいい」

のです。

実際の例

例えば、自閉症の例をみてみましょう。

アメリカ自閉症研究協会が行った患者の両親による治療評価アンケートによると、

自閉症に効果が見られたと両親が評価したサプリメント第1位はSAMe(サミー)(66%が効果が見られたと評価)ですが、

悪化した(と両親が評価した)サプリメント第1位もSAMe(15%)でした。

SAMeは神経伝達物質の代謝を促し、解毒を促進する強力なメチル供与体です。

自閉症児の多くはメチル基が不足していますので、投与により劇的な効果が見られる場合もあります。

しかし、外来でSAMeを処方されたお子さんが翌日に、家の車をぼこぼこにしてしまったという話もあります。

SAMeにより興奮性神経伝達物質が増えすぎたために起きた現象です。

これは、「 認知症にアリセプトを多く出したら、徘徊がひどくなった」というのと全く一緒の話です。

他にビタミンB12(63%)や、葉酸(42%)も同様に効果が見られる栄養素ですが、

これらは全てメチレーション回路を回し、メチル基を作り出します。

だからこれらの栄養素は、1種類ずつ足しながら、少しずつ増量しなくてはなりません。

デパケンや、テオフィリン等の薬を投与するときは、血中濃度を測定することがあります。

これらの薬は、有効量と中毒量が接近しているため、血中濃度をモニタリングしながらでないと危険なのです。

同様に、脳に対するサプリメントは、効果をモニタリングしながら使うのが安全です。

自閉症などの精神疾患に対するメチレーション治療こそ、検査結果をもとに治療サプリや量を決めるべきだと思います。

( 例えば、HDRI社のメチレーション検査は、葉酸、SAMe、グルタチオン等を測定することにより、体内の回路がどこで滞っていて、それを解消するためにはどの栄養素を使うべきかを教えてくれます。

検査導入及び、解析法ののお問い合わせは医科歯科連携普及協会事務局まで
http://ikashika.org/

分子栄養学の始まりは、1968年、ポーリングがサイエンス誌に発表した

「分子整合精神医学」という論文です。

その中の一節には、こうあります。

“他の臓器と比べて脳は 組成している分子化合物や その構造に深い依存傾向がある。”

つまり、脳は栄養素が効きやすい臓器だという意味ですが、その気になってみると、「脳に対して多すぎる栄養素は害を及ぼす可能性があるので、気を付けるべき」という注意も含まれているように感じられるから不思議です。

「充分な量を摂って、生体の利用に任せる」

「なるべく少ない量から徐々に使い、モニタリングしながらバランスをとる」

全く異なる治療方針ですが、どちらもドーズレスポンスと言えるでしょう。

サプリを効かせる方法論 その25

「脳のサプリは、1種類ずつ慎重に摂る。 できればモニタリングする。」

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