歯周病が全身にもたらす影響

歯周病と全身疾患

身体になんらかのリスク因子がある場合、一般的に歯周病は簡単に発症し、急速に進行します。またその逆もあり歯周病が引き金となる全身感染症もあります。

歯周病の病原菌は血流にのって移動し、色々な組織にバイオフィルムのコロニーをつくって定着します。

通常の病原菌であれば免疫等により押さえられます。しかし歯周病の細菌群はもともと血漿とほぼ同じ成分である歯肉溝浸出液の中で生存しているため、血液の中に入り込んでもしばらく生き延びられます。

歯肉溝浸出液とは歯肉溝から分泌される液体のことです。これには白血球や抗体などの免疫成分が含まれており、細菌から歯を守る働きを担っています。

歯周病が誘発する全身感染症には下記のようなものがあります。

  • 関節炎と骨粗鬆症
  • 腎炎と糖尿病の増悪
  • 高齢者の誤飲性肺炎
  • 皮膚炎
  • 早流産と低体重児出産
  • 敗血症と細菌性心内膜炎
  • 動脈硬化と虚血性心疾患
  • 消化性潰瘍  など

歯肉組織中に見いだされる炎症促進物質(プロスタグランジンなど)により、組織が炎症状態になります。これにより歯肉の発赤・腫脹・歯槽骨などの歯周病症状が引き起こされます。

その結果、下記の流れで全身性疾患となります。

歯肉・歯周組織の炎症

→①咀嚼能力の低下・口腔常在細菌叢の攪乱・口腔粘膜バリア機能破綻・唾液分泌低下

→②胃腸負担増大・胃腸機能低下・消化不良

→③慢性的消化管炎症・腸粘膜バリア機能破綻・腸内細菌叢攪乱

→④免疫異常、全身炎症

(バクテリアルトランズロケーション、内毒素循環、炎症性サイトカインなど)

→⑤全身性疾患・自己免疫疾患など

歯周炎と歯肉炎の違い

歯周病とは歯周組織に発生し歯周組織を破壊し、その機能を損傷することを言います。

歯周疾患のほとんどが歯面上に沈着したプラーク細菌に由来するものです。

歯肉炎および成人性歯周炎(※1)が最も普通にみられます。歯周疾患は病巣の広がりによって

「歯肉炎」と「歯周炎」に分類され、さらに急性型と慢性型に分類されますが多くは慢性型です。

※1成人性歯周炎 30歳以降に発病し、歯に非常に多くの歯垢がついて歯周組織を破壊していきます。歯垢の量が多ければそれだけ炎症は強くなり、骨は水平・垂直方向にも吸収していきます。

「歯肉炎」は、病巣が歯肉に限った炎症のことです。炎症や組織の破壊が歯槽骨にまで及んでいないものになります。

「歯周炎」は、炎症が歯肉を超えて根尖側へ広がり歯根膜や歯槽骨の破壊をきたした場合を歯周炎と呼びます。歯周炎の多くは中年期以降の大人に多くみられる成人性歯周炎で慢性に経過します。

歯肉炎にみられたうっ血、水腫、排膿症状に加え、病状の進行に伴い歯の弛緩動揺、疼痛、歯肉の退縮や歯根の露出を起こします。

口呼吸による免疫バリアの低下

本来呼吸は口を閉じて鼻で行うものですが、口呼吸をすることにより、歯肉や粘膜が乾燥し、細菌に対する抵抗性や唾液の自浄性が低下し、プラークが歯面に付着しやすくなり炎症が増加します。

唾液の自浄性とは歯の表面や歯間に付着したプラークや食べ物の残りカスを洗い流す作用です。

口呼吸チェックリストの一例

  • いつも口を開けている
  • 口を閉じると、あごに梅干し状のシワができる
  • 食べるときにクチャクチャ音をたてる
  • 朝起きたときに喉がヒリヒリする
  • 歯のかみ合わせが悪い
  • 唇がよく渇く
  • イビキや歯ぎしりがある
  • 口臭が強い
  • タバコを吸っている
  • 激しいスポーツをしている

鼻呼吸の場合、鼻の中の粘膜と鼻毛がフィルターと温度調節の役割をして、ウイルスや細菌の侵入を防ぎます。また口呼吸では口の中が乾燥して唾液量が減少し、唾液には口腔内の細菌を殺す役割があるため、さらに細菌やウイルスがの喉に炎症を引きおこしやすくなります。口呼吸ではウイルスや細菌がダイレクトに体内に入り込みます。

喉には口蓋扁桃や舌扁桃、アデノイドなどの器官からなる扁桃リンパ組織があります。

扁桃リンパ組織は病原体などに対する免疫の獲得や、免疫防御機構を持つ重要な部分です。

喉の炎症が慢性化すると、異物から身を守る最前線であったはずの扁桃リンパ組織はしだいに雑菌の温床になり、その結果全身の免疫系に異常を引き起こします。

アトピー性皮膚炎・関節リウマチ・掌蹠膿疱症などの関連が指摘されています。また皮膚や関節、腎臓など扁桃から離れた部位に二次感染として様々な病気を発症します

口呼吸に特有の口腔内所見は、前歯の唇面では健康な歯肉と乾燥した歯肉の境界が明瞭に識別でき、口呼吸線(mouth breathing line)と呼ばれます。上顎の口蓋側の歯肉では堤状隆起(tension ledge)(下記の写真参照)といわれる歯肉の堤状の腫脹が観察されます。

出典:岡山の医療健康ガイドMEDICAより

(http://medica.sanyonews.jp/article/4089/)

唾液と消化管免疫

唾液は粘膜免疫の第一線の防御システムとして重要な働きを担っています。感染を引き起こす病原性微生物がこの第一線の防御を破り、体内に侵入した場合には全身系免疫機構が作動します。唾液の粘膜免疫は主にIgA(※2)が中心的となっています。

※2 IgA:体内で一番多い抗体。主に腸管で腸内細菌の監視役をしている。血液・体液・組織中ではIgGの次に多い。

①唾液の流れにより歯の表面や歯間にある食べ物のカスやプラークを洗い流す自浄作用

②潤滑作用  口の中の食べ物を唾液で濡らすことで喉の通りがよくなる作用

保護作用  舌や口の中の粘膜を潤し、乾燥から保護する作用

③緩衝作用  口の中のphを一定に保って、細菌の繁殖を抑える作用

④リゾチーム、ラクトフェリン(※3)、ペルオキシダーゼ、分泌型IgAなどの抗菌作用

(※3)唾液のラクトフェリン(lactoferrin)

ラクトフェリンは唾液中から発見された鉄の結合する糖タンパクです。ラクトフェリンは細菌に鉄を与えないことで抗菌活性を発揮するものと考えられてきましたが、最近、種々の連鎖球菌に対する鉄非依存性の抗菌活性もあることがわかってきました。

 

歯周病に対するサプリメント

歯周病に有効とされるサプリメントは下記のものが挙げられます。

1.口腔プロバイオティクス

三種の健康的な人から得られた口腔内乳酸菌の中から、歯周病菌やムシ歯に有効な菌株を選択口腔内乳酸菌で病原菌を置き換えます。

  • ストレプトコッカス オラリウス
  • ストレプトコッカス ウベリス
  • ストレプトコッカス ラッタス

これらは健康的な口腔内に多くみられる有用常在菌で、ヒト口腔細菌のムシ歯菌・歯周病菌に対して抑制効果を示しています。

2.IgA抗体(粘膜バリア)となる材料の補給

  • グルタミン
  • ビタミンA
  • β―グルカン
  • フコダイン
  • ラクトフェリン

3.唾液分泌を促すために

唾液を多く出すためには、よく噛んで食べることが重要です。また高齢者など唾液に含まれるムチンの主成分であるコンドロイチン硫酸の生合成が低下している場合があります。

  • コンドロイチン硫酸・グルコサミン(唾液の成分)
  • カルシウム・マグネシウム・ビタミンD・ビタミンK(唾液腺の石灰化対策)
  • ビタミンA(唾液腺の分化正常化)

4.消化管の働き

  • ビタミンA,グルタミン(腸内感染への抵抗力向上)
  • ダイエタリーファイバー、乳酸菌(腸内環境の改善)
  • ラクトフェリン(悪玉菌の抑制)

5.ラクトフェリンの働き

①免疫調整作用

小腸にあるリンパ球が集合した免疫組織であるパイエル板は腸管の免疫だけでなく全身の免疫ネットワークの維持に大きく関与しています。

②抗菌・抗ウイルス作用

ラクトフェリンは鉄との親和力(結合力)が非常に高い

白血球の一種であるマクロファージや好中球(貪食細胞)の中にラクトフェリンが沢山存在し、それにより鉄を引き入れる作用があります。したがって、強力な活性酸素の発生(フェントン反応)が活性され、細菌やウイルスを攻撃します。

③腸内細菌叢改善作用

ラクトフェリンにはヒトに有害な菌の増殖を阻害し有益な菌が育ちやすい環境を整える作用があります。

6.オリーブ葉エキス

古代ギリシアより利用されてきた天然の抗生物質様物質で主成分はオーレユーロペンです。体内のアミノ酸と結合することなく、オーレユーロペンの抗菌成分であるエレノール酸カルシウム塩が十分に働くことができるように工夫されています。

①オーレユーロペンとは

苦いグルコース配糖体でオリーブの樹全体に存在していて、オリーブを害虫などから守る役割を果たしています。

マクロファージや好中球の働きを活性化させるだけでなく、直接菌やウイルスを攻撃すると考えられています。

②オリーブ歯エキスの効果

  • ウイルスを不活化し増殖を防ぐ
  • 細菌・真菌・寄生虫を殺傷
  • 身体エネルギー産生を高め、免疫機能を高める
  • ウイルスが生存するための必要なアミノ酸のみの生成を防ぐ
  • レトロウイルスの逆転写酵素、タンパク質分解酵素のプロテアーゼ合成を抑制
  • 免疫細胞や免疫システムの反応を促す

7.ビタミンC

  • コラーゲンをつくる
  • 免疫力を高める
  • ステロイドホルモンをつくる
  • 鉄の吸収を助ける
  • 酵素の働きを助ける
  • メラニン色素の生成を抑制する

歯周病に対する食事

歯周病のコントロールには「正しい糖質のとり方」が重要になってきます。

極端な糖質制限は低血糖症(血糖調節異常)の方や副腎疲労の方、また子供や高齢者には不向きでかえって体調を崩す恐れがあります。医師に相談することをお勧めします。

1.歯周病と血糖値

糖尿病の患者さんは健康な人より2倍以上も歯周病にかかりやすく、重症化しやすいことがわかっています。また糖尿病の治療をしても改善しないばかりか、悪化を招きます。

糖尿病により高血糖状態が続くと、全身の血管がもろくなって、様々な合併症を引き起こします。この血管障害は歯肉の毛細血管にも至り、歯周病の炎症を悪化させます。

また糖尿病になると免疫力が低下するため歯周病の増殖を抑えられなくなることも一因です。歯周病にかかっていると、炎症のある組織から産生される「炎症性サイトカイン」が歯肉の毛細血管から血液中に入り込み、その結果血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを阻害することが解明されています。この「インスリン抵抗性」の状態になると、膵臓ががんばってインスリンを分泌しても血糖値がさがらないため

膵臓は疲労困憊してついにはインスリンが分泌されなくなり、また同時に歯周病も進行していく「負のスパイラル」になってしまいます。

糖尿病の患者さんにかぎらず高血糖になると同じような現象が起こります。そのため糖尿病患者さんやまたそれ以外の人であっても糖質の摂取には注意が必要です。

2.糖質の摂り方

糖質のとり方また糖質が血管や皮膚のタンパク質と結合して、老化の原因となる反応のことを「糖化」といいます。血糖値が高い状態で起こりやすく、動脈硬化や皮膚のたるみ、シワの原因にもなると考えられています。

糖化で体に悪さをする物質を「AGE(最終糖化生成物)」といい、このAGEと最も深く関連する病気が脂肪肝です。特に糖化しやすいのは果物に含まれる果糖でブドウ糖の10倍もし糖化しやすいと言われます。果糖などを摂りすぎて糖化すると脂肪肝を招き、AGEが大量に放出されます。すると動脈硬化、糖尿病、アルツハイマー型認知症、ガン、肌の老化など様々な弊害が生じます。また歯周病の患者やさんの悪化因子になっています。

①糖質の摂り過ぎに注意しましょう

糖質にはブドウ糖や果糖などの「単糖類」、ショ糖や乳糖などの「二糖類」、でんぷんなどの「多糖類」があります。果物に含まれる果糖は単糖類で、糖質の中でも最もスピーディーに吸収される性質を持っています。体内に入ると血糖値を急激に上昇させ、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの過剰分泌を促します。さらに最近の果物は糖度を高めているものが多くなっています。果物の摂りすぎには注意しましょう。

②食べる順番を意識しましょう

食事をとる際は食物繊維やタンパク質からお箸をつけましょう。食物繊維は消化吸収の速度を緩やかにし、急激な血糖値の上昇を防ぎます。

血糖値を上昇させるスピードは糖質→タンパク質→脂質の順番です。また脂質には

糖質と合わせて食べると血糖値の急上昇を抑えるという大きな利点があります。

食事に中鎖脂肪酸のMCTオイルや亜麻仁油、オリーブオイルなどの脂質も適度に加えることで、血糖値の急上昇を抑え、また良質な油を積極的に摂取するものオススメです。

とはいっても主食の食べ過ぎも気を付けましょう。お米、パン、麺類はなるべく量を減らしましょう。なお完全にオフするとかえってよくない方もいらっしゃいますので、医師に相談しましょう。

③素材をシンプルに料理しましょう

和食はみりんや砂糖など糖質が多く含まれます。

またケッチャップ・ソース・甘味噌は糖質が多い調味料です。塩・こしょう・レモン・ポン酢などで味付けするといいでしょう。

④糖質の摂取を抑えた代わりにタンパク質や食物繊維を取り入れましょう

またタンパク質を増やすとお腹が張ったり、胃腸に負担がかかってしまう場合は消化酵素を取り入れると消化吸収がスムーズにすすみやすくなります。

⑤食物繊維を積極的に取り入れましょう

  • 咀嚼の回数を増やし、唾液の分泌を高め、満腹感を得やすくします。
  • 消化管の働きを活発にします。
  • ブドウ糖の消化吸収をゆるやかにし食後高血糖を防ぎます。
  • 便を軟らかくし、便かさを増やし、便秘を予防、改善します。
  • 重金属や発がん性物質などの有害金属の排泄を促進します。
  • 腸内の有用菌を増やし、腸内環境を整えます。

まとめ

  • 空腹時に糖質単体摂取は避けましょう。
  • 食物繊維も多めに取りましょう。
  • 就寝前の糖質摂取はやめましょう。

筆者プロフィール

安藤 麻希子

臨床分子栄養医学研究会 会員
臨床分子栄養医学認定医
臨床分子栄養医学認定指導医
日本免疫病治療研究会 会員
高濃度ビタミンC点滴療法学会会員
歯科医師

1978年札幌生まれ。日本歯科大学卒業。
札幌医科大学口腔外科臨床研修医を経て、開業医の勤務医として一般歯科治療を行ってきました。
2008年より結婚を機に夫の仕事のため海外での生活がスタート
環境の変化や海外での男の子2人の育児などのストレスから、数年にわたり度々体調を崩し病院を転々とする中、運命的に分子整合栄養医学と出会い不調の原因究明や食習慣、生活習慣の見直しサプリメントの補給により健康な身体を取り戻しました。
歯科医師でありながら私自身が患者という立場になった経験を活かし常に患者さんの声に耳を傾け私自身が助けられた分子整合栄養医学を勉強し、多くの患者さんたちに広めまた健康をとりもどして欲しいという志のもと分子整合栄養医学療法を実践しています。

口腔内の健康なくして全身の健康は得られないというモットーのも
口腔内科を中心に全身にも栄養療法でアプローチしています。
また不妊で悩む女性やお母さん子供のための栄養セミナー
「ママになるためのママのための栄養セミナー」を定期的に札幌で開催していま
す。
(Facebook・HP http://www.orthomolecular-health.jp/ でも情報発信中です。)

近藤歯科医院
〒062-0932
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