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新しいタイ料理とは? いまの東京を代表する2店で食べ比べ!【食のカイ・カン 】Vol.4 | Feature

目黒の「みもっと」で、優しいタイ料理の世界を満喫。

目黒川のほど近く、緑に包まれた「みもっと」は、一年中予約が取れないレストランとして有名。タイ料理家のみもっと先生がひとりで切り盛りする。月いちの「スナックみもっと」や「喫茶みもっと」などのイベントはSNSで確認を。

目黒の「みもっと」で、優しいタイ料理の世界を満喫。

みもっと先生の「ゲーンハンレー」、以下料理はすべて、「おいしみコース9品」¥6,600(税込)から。「おいしみもっとコース12、3品」¥9,900(税込)もある。

今度は目黒の「みもっと」を訪れた幹さん。開さんからの「40分ほど遅れます」とのメッセージに、「開の40分は、たぶん1時間40分くらいだから、どんどん進めましょう」と幹さん。みもっと先生とふたりで、日頃から感じていた日本のタイ料理界の現状や問題点について、話が弾み始めた。みもっと先生は、マンダリンオリエンタルバンコクで洗練されたタイ料理を基本から学んだ本格派。帰国後、カレーペーストからディップソースに至るまで、すべてていねいに手づくりする本格タイ料理教室 「おいしみ研究所」を経て、目黒に「みもっと」を開店。日本の食材を活かし切った美しく、洗練されたタイ料理が得意だ。自然な農法でつくられた野菜やハーブを使い、身体によい、本物のタイ料理にこだわっている。だからこそ、日本の現状には疑問点も多い。

幹:タイ料理の話って、言いたいことたくさんあるよね。

み:あるある。

幹:よく日本人って、日本料理は味の天才だとかって、すごい偉そうなこと言うけど、タイ料理とかいうと軽視する。でも、ここまでバランスを繊細にとって仕上げる料理っていうのは、それはそれですごいと思う。色を使わない水墨画みたいな絵じゃなくて、カラフルな色を使いながらもちゃんと整った絵を描けるって、そっちのほうが……。

み:そうだよねぇ、すごいと思う。

ここで、みもっと先生のゲーンハンレーが登場。試食しながら、開さんを待つ。

み : これは基本、ショウガと豚バラ肉のカレーで、私は必ず自家製のニンニクの漬物を使う。ニンニクの漬物と、ホムデン(和名アカワケギ、シャロットとネギの雑種)の生を入れて煮込む。ピーナッツはウチの店ではマッサマンカレーにしか入れない。

幹 : ほーっ、なぜ⁉ それ聞きたいですね。

み : ピーナッツを入れるのは南インドのカレーのイメージだから、マッサマンカレーには入れるんだけど、ゲーンハンレーには入れない。

ここで、遅れて登場した開さんが突然、試食と会話に参戦。ご飯のお代わりを繰り返しながら、みもっと先生の「ゲーンハンレー」に夢中になっている。

開:コレめちゃくちゃ、おいしい。別に幹ちゃんのがおいしくないって訳じゃないんだよ。みんな違って、みんないい。ちょっと、こっちのほうがまっすぐ辛いっていう感じかな。でも、肉のジューシーな感じとか繊細だし、やはり女性らしい感じがする。甘みにも深みがある。この酸っぱ甘いのは!?

み : タマリンドだね。

開 : ココナッツは?

み  : ココナッツは入れない。北インドとか東北地方のカレーって、入れないのが多い。昔、ココナッツが取れなかったみたいで、ココナッツなしの料理が多いんです。

目黒の「みもっと」で、優しいタイ料理の世界を満喫。

旬の野菜をおいしく食べさせることでも有名なみもっと先生の「ヤムタワイ」。ココナッツミルク、燻製した魚の香り、ペーストの酸味、フライドオニオンの香ばしさ。複雑な味が分け難くひとつになっている。

どうしてタイ料理のブームが来ないのか、考察する3人。話しながらみもっと先生は、皿に放射状にきれいに盛り付けられた「ヤムタワイ」をテーブルへ。「チョンプー」の「カオヤム」や「カントークプレート」同様、日本のタイ料理店では見かけない、タイ料理の奥深さを感じさせるひと皿だ。

開: おーっ、キレイ。タイ料理って、ビジュアルが映えるね。

み : タイ料理の魅力は、さまざまな味がプラスプラスで重なっていって、複雑な旨味を醸し出すところ。鮮やかな色彩と、美しいプレゼンテーションも魅力だよね。チョンプ―で食べた「カオヤム」みたいに。

み:でもさ、流行んないんだよねぇ、なんだか。

幹:流行んないし、みんなにちゃんとわかってもらえてない感じがする。

み:あるよねぇ(笑)。それは、これまでちゃんとしたものがなかったからかも知れないし。タイに行っても日本人が知ってるタイ料理って屋台だから、みんなそういうとこ行くわけ、あとカニ屋さん。

開:そうそう! カニ屋さんね!(笑)

み:私は駐妻(駐在員の妻)でバンコクに行ってたんだけど、その時に高い店でも安い店でも食べて、ちゃんとお金払ったらこんな違うんだってめちゃめちゃ思った。

開:その高い店の料理ってなんだろなぁ。屋台でやってることを、すごく高いとこでやるのか? それとも、まったく違うような料理?

み:なんか町中華と高級中華の違いみたいな感じ。

開&幹:ああああ、なるほどねぇー。

み:楽するか、ちゃんと出汁からやるかの違いがあるの、タイ料理には。

幹:マヨネーズの味がバチバチにするエビマヨか、マンゴーの香りがするエビマヨか?

開:料理自体はおんなじなんだけど、それをちゃんと高いレベルにもっていくっていう、文化度の違いみたいな感じ。

開 : ずいぶんモダンできれいだけど、これ(ヤムタワイ)もタイの古典的な料理なの!?

み : うん。いま世界で主流になっているタイ料理は、オーセンティックなメニューを選び抜いた素材と現代の文脈で再現してるのが特長。このヤムタワイもその文脈。バブル期に流行ったフレンチやイタリアンを取り入れたヌーべル系とは全然違うところにあるの。

開 : これは、いわゆるサラダという感覚でいいのかな!?

み : そうだね。昔はこうやって必ず野菜に火を通したの。

幹 : 野菜はお湯で茹でてないよね?

み : うん。ココナッツミルクで軽く茹でることで、微妙な味や香りも加わってる。

幹 : かかってるソースも凝ってるよね。

み : 燻製した魚の粉末をペーストに練り込んであるの。

開: 野菜もたくさん入ってる。

み : 7種類。これは数も決まってるの、種類は変えてもいいけど、必ず7種類。

幹 : 野菜自体もいろんな食感のものが入ってるのに、中央には細かく割いた蒸し鶏と、カリカリのフライドオニオン!!

開 : これは屋台では出せない手の込みようだワ。

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「ゲーンオーンガイ」は東北部イサーンのスープ、近隣のラオスの影響が強くナンプラーラー(ナンプラーを濾した後のドロドロの調味料)と煎り米の粉末を使う。

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タイ北部の国境にある街チェンコーンにほど近いラオスの世界遺産の街ルアンパバーンの郷土料理「生魚のラープ」。「なめろう」に似た食感で、日本人には馴染み深い味。

続いて登場したみもっと先生の料理は、タイ各地の料理に詳しい彼女らしくイサーン地方のスープ「ゲーンオーンガイ」とラオス側の「生魚のラープ」。

み:タイ料理って、数百年前の文献にもトムヤンクンが出てきたりして、地方性はあるけど、長い歴史を守ってる。バンコクがいちばん中央部でオーソドックス。チェンマイとか北のほうはミャンマーの文化が入って来て、中国の雲南省とかの影響がある。さらにイサーン(タイの東北部)はラオスの影響を受けた東北料理の文化があるんです。

幹:で、民族的にも、ミャンマー、チェンマイ、ラオスとか同じ民族が……。

み:(少数民族の)シャン族はチェンマイに住んでて、彼らが納豆を食べるんだよね。

幹:豆腐みたいなものとかも。

み:で、中央部があって、南はまたまったく違うんだよね。マレーシア料理とかが入って来てて、魚料理が多い。昔はタイ料理だと煮ることしかしてなくて、炭火で十分だった。

開:蒸すのとかは?

み:蒸すのも、炒めと一緒で中国から伝わったね。30年前のチェンマイと言われてる、ラオスにあるルアンパバーンという街に行くと、まだガスが通ってなくて、炭火の煮炊きしかできない。だから、炒め物なんて出てこないよ、火を使うのはお金がかかるから。ランチは生魚を「なめろう」みたいに、ミンチにして食べるの。

開 : ああ、この「生魚のラープ」は確かに上にのった唐辛子やミント、下の葉っぱがなければ千葉あたりの「なめろう」みたいだね。こっちのスープは!?

み : ゲーンオーンガイ、ラオスでは「オーラム」と呼ばれるさまざまな香草を入れた具だくさんのスープと煮込みの中間くらいの感じかな。一般的なナンプラーを濾した後のドロドロの溶液ナンプラーラーで味を付ける。ウチの店はそのままだと(日本人には)強烈だから、ハーブやパイナップル、マンゴーなんかを入れて煮込むことでマイルドに調整してる。

目黒の「みもっと」で、優しいタイ料理の世界を満喫。

シンプルにつくられたからこそ、トッピングが活きるみもっと先生の「ココナッツアイスクリーム」。

そして、いよいよクライマックスの「ココナッツアイスクリーム」。発酵で攻めた「チョンプー」の「自家発酵ココナッツヨーグルトのアイスクリーム」に対して、みもっと先生はシンプル・イズ・ベストで勝負する。

幹:このアイスクリームも、シンプルにおいしいよね。

み:もうシンプルに塩ときび砂糖とココナッツミルクだけ。トッピングには乾炒りしたココナッツロング( ココナッツの果肉を細かく削って乾燥させたもの)をのせてる。

開:ヨーグルトは入れないの!?

み:ヨーグルトは入れない。昔、市場の片隅で食べた感じを思い出してつくってて、おばちゃんがガラガラって、でっかい機械みたいなのを持ってくるわけ。そこにアイスが入ってて、トッピングがあるわけ。芋とか、コーンとか。で、好きなのを指差して注文する、私はそっちを目指してて。

開:なるほどね、だから、アイスクリーム自体はシンプルにしてるんだ。

幹:いま、世界中でモダンなタイ料理が食の先端になっているのに、日本だけは未だにトムヤンクンとグリーンカレー。

み:そして、パクチーね。その世界から早く抜け出して時差のないタイ料理を知ってほしい。

開:そこはやっぱり、幹ちゃんとみもっとさんのふたりにかかってるね。まるでアートブックみたいなみもっとさんの今度の本『あたらしいタイ料理』も、きっときっかけになると思うよ。

幹:とにかく、まずは食べてみてほしい。

み:きっと、びっくりするはずだから。

目黒の「みもっと」で、優しいタイ料理の世界を満喫。

みもっと先生がこの秋に上梓した著書『あたらしいタイ料理』¥3,960(税込)は、現在絶賛発売中。ページが一枚一枚カードになっていて、キッチンで立て掛けて見ることもできる。壁に飾りたくなる美しさ。


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