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『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』に見る「刃牙」シリーズのエッセンス(加山竜司) – 個人 – Yahoo!ニュース

烈海王、異世界に転移するッッ!

2020年11月6日に「月刊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載がスタートするやいなや、あっという間にマンガ好きのあいだで話題になったのが『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』(企画・原案:板垣恵介、原作:猪原賽、作画:陸井栄史)である。

本作は、格闘マンガの金字塔「刃牙」シリーズ(板垣恵介)に登場する中国拳法の達人・烈海王を主人公とするスピンオフ作品。シリーズ第4部『刃牙道』にて、現代に復活した宮本武蔵と死闘を演じた末に絶命した烈海王が、剣と魔法の世界に転生(転移)してしまう。

大ヒット作品の人気キャラクターが異世界に転生する異色作のコミックス第1巻が、5月7日にリリースされた。

(C)板垣恵介・猪原賽・陸井栄史(秋田書店)2021
(C)板垣恵介・猪原賽・陸井栄史(秋田書店)2021

トレンドの異世界転生モノ

現在、日本のエンタメ業界では「異世界」ブームが続いている。ブームの原動力となったのは、小説投稿サイト『小説家になろう』(株式会社ヒナプロジェクト)に投稿された作品群である。

「なろう小説」が商業出版されたり、メディア化されたりするムーブメントの中から『Re:ゼロから始める異世界』(長月達平)や『転生したらスライムだった件』(伏瀬)といったヒット作が続々と生まれ、異世界転生作品が注目を集めるようになった。

「現世の記憶を持ったまま異世界に生まれ変わり、チートスキルを駆使して大活躍する」をひとつの定型としつつも、転生(生まれ変わり)ではなく転移(現在の自分の姿もまま)だったり、あるいは遷移先がゲーム内の世界だったりと、実にさまざまなバリエーションが誕生した。

単に主人公が大活躍する話ばかりではなく、「ざまぁ」「追放」「もう遅い」といったキーワードで示されるような、「実は主人公が有能で、自分を冷遇した人々を見返す」系の話が主流となってきていたり、あるいは女性を対象とする作品では「悪役令嬢(乙女ゲームのヒロインのライバル役に転生)」が大流行したりするなど、作品傾向のトレンドはつねに変化している。

さながらジャンルムービー(ホラー映画など)のように、物語の様式が定型として確立したことで、「異世界転生モノ」は作り手側が想像力を働かせやすいジャンルとなった。その結果、数多の才能が独自のアイデアを持ち込み、百花繚乱の現状がある。

それでも既存作品のスピンオフとして「異世界転生モノ」が描かれる前例は少なかったことも、本作『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』が注目を集めた一因だろう。

『刃牙』シリーズの正統なスピンオフ

さて、異世界転生モノには「主人公の異能ぶりを目の当たりにした異世界住民が騒然とする」という、第三者の“気づき”が物語を盛り上げる演出として組み込まれている。

この手法は、実は「刃牙」シリーズとは相性がいい。範馬勇次郎が素手で白熊を屠っているところを目撃したコジュシャーキン氏しかり、タンザニア共和国自然公園で超規格外の象を倒す勇次郎を目撃したMr.サマンしかり。第三者の目撃証言がキャラクターの魅力を増幅させる仕掛けは、「刃牙」シリーズのお家芸でもある。

『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』では、烈海王を「目撃」する人物が狂言回しとして物語冒頭から登場。「異世界転生モノ」の定型的手法を、「刃牙」シリーズのテイストで用いているところに本作の特徴がある。

なお、「刃牙」シリーズの真骨頂は、主人公・範馬刃牙の次のセリフに端的に言い表されている。

ああいうことが好きなんだ……

大の男2人並べて―――――

さァ

どっちが強ええんだ?…………

みたいのが…………ね

(『グラップラー刃牙』21巻187話より)

『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』の烈海王は、異世界でリザードマンや“魔法使い”といった異世界ならではのキャラクターと対峙する。ギルドに登録して冒険して現代の知識を活かして活躍する……といった異世界テンプレではなく、あくまで1対1のバトルに向かっていくところにも「刃牙」シリーズらしさが感じられる。

これまで「刃牙」シリーズには夜叉猿やアナコンダなどの規格外動物が登場し、映画『地上最強のカラテ PART2』(1975年)における「ウィリー・ウィリアムス対人喰い熊」の熱狂を彷彿とさせるような、人間対野生のデスマッチが行われてきた。そうした「刃牙」シリーズにおけるデスマッチ要素を、2本指でグググッとピンチアウトするかのようなバトルに期待が膨らむ。

「烈海王×異世界」という異色の組み合わせでありながら、タイトルに「刃牙外伝」と冠しているように、本作は「刃牙」シリーズのエッセンスをふんだんに盛り込んでいる。その意味では、実に正統なスピンオフ作品といえるのではないだろうか。


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