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もうひとつの“緊急事態” 子どものネット依存・ゲーム障害
「1日20時間、ゲームをしていました」
「自分ではコントロールできないから親に止めてほしい」
取材で出会った子どもたちのことばです。
オンラインゲームやSNSなどにのめり込む「ネット依存」や「ゲーム障害」。その危険性は以前から指摘されていましたが、コロナ禍で依存を深める子どもが急増しています。
休校などで子どもの生活環境が大きく変化するなかで“緊急事態”ともいえる状況になっているのです。
心当たりがある家庭も少なくないのではないでしょうか。
手遅れになる前に親の助けが必要です。

(ネットワーク報道部記者 小倉真依・玉木香代子)

ウソがばれた

去年の夏。

高校2年生の進さん(仮名・17歳)が、自宅の部屋でオンラインのゲームイベントに没頭していると、突然、母親が入ってきました。

「約束を破ってどういうつもりなの」

母親の陽子さん(仮名・45歳)による“抜き打ち検査”でした。

進さんが勉強に専念できるよう、タブレットはリビングでしか使わない約束だったのです。

タブレットには、マージャンゲームなど10種類以上のオンラインゲームがダウンロードされていました。

進さんのウソがばれた瞬間でした。

「いったい勉強は、どうなっていたの?」
陽子さんは怒りが湧いてくるのを感じました。

去年の緊急事態宣言による休校が終わり、授業が再開された後も、進さんは塾が終わる時間をごまかしてゲームセンターに行ったり、夜遅くまでオンラインゲームに明け暮れる生活を送っていたのです。

休校の空白を埋めたオンラインゲーム

いま思えば、ゲームにのめり込む条件はそろっていました。

コロナ前は野球部に所属し、勉強や部活で忙しい日々でした。

しかし“新たな日常”によって一変。

一斉休校で部活も休止になり、オンライン授業すら開かれない日々。

ぽっかり空いた時間を埋めてくれたのがオンラインゲームでした。

進さん
「学校のない生活に正直、戸惑いました。でもクラスの友達もやってたゲームなら、休校中でもつながって遊べるし、寂しいとかもなかったですね」

進さんが特にのめり込んだのは、オンラインのマージャンゲームでした。

かわいいキャラクターが登場し、軽快な音や声にあわせて展開します。

魅力を感じたのは、ゲームが終わるたびに出る得点やランキングでした。

ランキングを決めるイベントも頻繁に開かれます。

イベントを見つけては申し込み、1日7時間を費やすこともありました。

高得点を出したときのゲームの画面をスクリーンショットで記録。

その画像をLINEで友だちに送って自慢し合うことに熱中し、気がつけば深夜2時を過ぎていることもありました。

進さん
「友達より優位に立ちたいし、負けたくない気持ちが強くなる。すげーなとか言われるとそれだけで優越感に浸れる。勉強ではこうはいかないんですけど。勝ったらもっとやりたくなるし、負けたら負けたでランキングを元に戻さないとってなって、まずいなと思っても、もう一回だけやりたいってなる。気がつけばゲームのことばかり考えていたし、ゲームの時間を確保するために睡眠時間や勉強時間を削るしかなくなっていました」

ゲームは共通言語

学校が再開されても、ゲームは生活の一部になっていました。

進さんの学校は進学校で、スマホは自由に持ち込めて、授業中も使うことができます。

学校や部活の連絡もLINE。

学校で好きなゲームや攻略方法を話題に盛り上がるのは、日常茶飯事でした。

進さんはゲームのランキング上位者がもらえる景品の“学業お守り”をポーチにつけて通学し、話題のきっかけにしていました。

ゲームという“共通言語”がなければ友達の輪にすら入れないと思い込み、楽しさと同時に、焦りも感じるようになっていきました。

「ぼく、ネット依存だから…」

母親の陽子さんも学生の頃、勉強が手につかなくなるほどゲームに夢中になった経験がありました。

息子の「裏切り」に心を痛めた一方、自制が効かなくなるゲームの魅力もわかる気がしていたのです。

ただ、いまのゲームはオンラインで、スマホなどで時間や場所を問わず楽しめるため、歯止めが利かなくなるのではないかと心配していました。

その心配は現実となり、進さんはウソがばれて強く叱られてからも、ゲームのイベントに申し込んでいました。

さらに、取り上げたタブレットの代わりに、父親の部屋のパソコンを隠れて使うようにもなっていたのです。

その事実を突きつけられた進さんは、陽子さんに「ぼく、ネット依存だから」と答えたといいます。

陽子さんは、息子の将来を守るためになんとかしなければと、危機感を強めました。

キーワード『ネット依存とゲーム障害』

オンラインゲームやSNS、ネット上の動画などにのめり込み、日常生活や健康に問題を起こしていると感じながら自分で止められない状態。

2017年の国の調査では、中学生の12.4%、高校生の16%にあたる推計93万人に「ネット依存」が疑われた。

WHO=世界保健機関は2019年、ゲームをしたい衝動が抑えられず、学力や体力の低下、昼夜逆転による睡眠障害などの影響を及ぼす症状を「ゲーム障害」という疾病に認定した。

陽子さんは親子の対話を始めました。

激しい口調で叱ることもありましたが、ゲームの時間を少しずつ減らして、お互い素直な気持ちを打ち明けて共有することで、少しずつ元の生活に戻っていきました。

進さん
「当初、ゲームは自分の世界だし、誰にも迷惑かけてないって思ってました。でも目先の楽しいことを優先しすぎて、ウソを重ねて家族を傷つけてきたんだと気づかされました。家族を傷つけないためにも、自分が変わらないといけないなと思いました」

ゲーム課金に100万円!?

進さんの体験は、特別なケースではありません。

大阪府は去年の秋、小学4年から高校3年までの児童・生徒およそ2万人に、インターネットの利用状況についてアンケートしました。

その結果、「ネット依存」の疑いがある子どもは、すべての学年で増加。

とりわけ高校生は3割近くに達し、男子生徒は前の年からほぼ倍増していました。

(「ネット依存チェックテスト」は記事の最後に掲載)

調査結果が報告されたのは、去年12月に大阪市で開かれたイベント「スマホサミット」です。

子どもの「ネット依存」について考えるため、府内の中高生や保護者などが参加して毎年開かれています。

コロナ禍で状況は大きく変化していました。

「1日20時間とか、ゲームをやったこともあります」

「コロナで休校になってやることがなくなって」

「ゲームの課金で100万円くらい使った子がいると聞きました」

子どもたちは口々に、ネットの利用に歯止めがかからない実態を語りました。

深刻なステージに

イベントの主催者側が驚いたのは、子どもたちから親の助けを求める声があがったことです。

「やめられないという依存性が自分にもあるので、自分で制限しきれない部分は親に制限してほしい」

「強制的に止めてもらえば確実にやめられると思う」

コロナ前にはなかった発言が相次ぎました。

兵庫県立大学 竹内和雄 准教授
「コロナ前までは、子どもたちは『自分で考えるから、大人はほっといてくれ』と言っていました。いまは『自分たちだけでは無理だから大人も協力してくれ』と。予想以上に、子どもたちが危機感を持っていると感じました」

子どもと向き合う際、親の世代の常識を捨てる必要があると指摘します。

兵庫県立大学 竹内和雄 准教授
「親の世代は『現実の世界』と『ネットの世界』を分けて考えますが、いまの子どもたちは、ネットもリアルな世界として受け止めています。ネットとリアルの両方の世界で人間関係を築いています。大人とは違う世界で生きている子どもたちと、どう接すればいいかを考えないといけないのです」

コロナによる一斉休校から、この春で1年。

竹内さんは、ネットの依存状態は1年以上続くと深刻になり、後戻りができなくなる恐れがあるとして対策を急ぐよう訴えています。

ネット依存の専門治療を行う神奈川県の「久里浜医療センター」によりますと、休校措置をきっかけに、ネットやゲームにつながる時間が増え、症状が悪化した患者が相次いでいるということです。

状態が悪化すれば、不登校になって家族に暴力を振るったり自殺をほのめかしたりするなど、家族まで精神的に追い込まれるケースも少なくないといいます。

保護者はどうすれば

手遅れになる前に、子どもとどう向き合えばいいのか。

不安を抱える保護者が増えています。

「子どもからゲームを取り上げると暴言を吐いたり暴力を振るったりする」

「生活が昼夜逆転してしまって学校に行けなくなっている」

臨床心理士の森山沙耶さんに寄せられた保護者の声です。

ネット依存のカウンセリングやサポートを行っていて、相談件数は、コロナ前と比べて倍増しています。

東京・三鷹市の小学生の保護者を対象にしたオンライン講演会で、森山さんが強調したのは、まず親がネットやゲームの実態を知ることの大切さでした。

臨床心理士 森山沙耶さん
「ゲームを悪だと思い込んで、過剰に叱ってしまったり、一方的にゲームを取り上げたりする保護者も少なくありません。子どもは『自分のことをわかってくれない』と思って、隠れてゲームをしたり嘘をついたりして、親はますます心配を募らせる悪循環に陥ります。子どもと信頼関係を築くには、まずは親がネットやゲームの世界を知ることがファーストステップです」

森山さんは、まずはゲームについて子どもに聞くのが近道だといいます。

子どもの世界を知るために、ゲームの実況動画などを見ることも会話のきっかけ作りになるとアドバイスしました。

臨床心理士 森山沙耶さん
「コロナ禍で、学校で会えない友達とつながって一緒にゲームをして遊べる。ネットやゲームの世界では、友達から注目を集めて『すごいね』と言ってもらえて、承認欲求が満たされます。メリットもある一方で、依存を深める背景にもなっているのです」

対策のポイントは?

家庭で子どもと向き合う際のポイントを教えてくれました。

1 子どもと話し合って利用時間のルールをつくる。

2 決めた時間が守れない場合には毅然とした態度を取る。

3 定期的にルールを見直す機会を設けて現実に即した形で運用する。

臨床心理士 森山沙耶さん
「子どもが気合いや根性で解決できる問題ではありません。親の意見を押しつけるのではなく、まず子どもの考えを聞く。否定せずに話してくれたことを肯定する。受容と共感が大切で、子どもの納得感も確認しながら、できるだけ主体的に参加できるようにルールを工夫してください」

そうはいっても、なかなかゲームをやめない子どもに頭を悩ませている親も多いはず。

森山さんは、子どもがルールを守ることができたら褒めてあげたり、おやつなどのご褒美を設定したりするなどして、子どもがルールを守るメリットを感じられるようにとアドバイスしました。

ゲーム機やスマホの機能や使い方を制限する「ペアレンタルコントロール」という機能を活用したり、ネットの世界から離れて親子で楽しめることを探したりすることも大切だといいます。

学校でもルール作り

対策が求められるのは、家庭だけではありません。

子どもがスマホを持つのが当たり前になり、小中学生1人につき1台のタブレット端末などを配る国の計画が進むなか、学校でもネット利用のルール作りが急務になっています。

大阪の能勢小・中学校では、去年4月、災害時などの連絡用に携帯電話の持ち込みを認めたのにあわせて「スマホの誓い 五カ条」というルールを定めました。

スマホの誓い 五カ条

第一条 知らない人とやりとりしない
第二条 夜10時~朝7時は使わない
第三条 学校内では使用しない
第四条 悪口を書き込まない
第五条 SNSに写真などを投稿する際は十分注意!!

ルール作りを主導したのは、生徒会の中学生たちです。

教師が一方的に決めて守らせるのではなく、生徒の自主性に委ねたのです。

大人も一緒に学ぶ時代に

遠藤克俊 校長
「もっと緩いルールを作るかなと思ったのですが、考えていた以上にきちっとした実現可能なルールを作り上げて感心しています。自分たちで作ったルールがあると、友だちどうしでブレーキをかけやすくなったのではないかと思います。もう『スマホを持つな』という時代ではなく『どう使うか、どう付き合っていくか』を、教員や保護者と一緒に子どもたちに伝えていく。大人も一緒に学ぶ時代が来ているんだと思います」

「ネット依存」チェックテスト

自分や子どもが「ネット依存」の傾向があるか簡単にチェックすることができます。

ぜひ試してみてください。

5つ以上にあてはまれば「ネット依存状態」。

3つ以上なら「ネット依存予備軍」です。

□Q1あなたはインターネットに夢中になっていると感じていますか?
□Q2満足を得るためにネットを使う時間をだんだん長くしていかねばならないと感じていますか?
□Q3ネット使用を制限したり、時間を減らしたり、完全にやめようとして失敗したことがたびたびありましたか?
□Q4ネット使用時間を短くしたり、完全にやめようとしたとき、落ち着かなかったり不機嫌や落ち込み、またはイライラなどを感じますか?
□Q5使いはじめに意図したよりも長い時間オンラインの状態でいますか?
□Q6ネットのために大切な人間関係、学校のことや部活動のことを台無しにしたり、危うくするようなことがありましたか?
□Q7ネットへの熱中のしすぎを隠すために、家族、学校の先生やそのほかの人たちにウソをついたことがありますか?
□Q8問題から逃げるために、または絶望的な気持ち、罪悪感、不安、落ち込みなどといった嫌な気持ちから逃げるためにネットを使いますか?

《診断質問票(Young)久里浜医療センター翻訳・改変》

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