うつ病=低血糖=糖質制限 のわな

今日は私の犯した痛恨のミスについてお話しします。

7,8年前の話だと思います。
栄養療法クリニックをはじめて間もない頃です。

28歳の女性にうつ病の相談を受けました。

「なにをするにもおっくう」
「出産後でストレスが強い」
「つわりがひどく、あまりたべられない」
「朝が起きられない」

といった症状です。

原因は低血糖症によるものではないか、ということで
クリニックに来院したのです。

低血糖症とは、血糖値の調節異常がある病態のことです。
ブドウ糖は脳のエネルギーの大部分を請け負っています。
だから、血液中のブドウ糖の値が低くなると脳の機能が低下します。

普通、眠くなったり、イライラしたりします。
中には、きれやすくなったり、うつ症状がでたりする人もいます。

来院した女性は、自分のことを
「低血糖のせいでうつ病の症状が出ているのではないか」
と考えていたわけです。

血液検査をしたら、空腹時の血糖値は68でした。
これはあきらかに低血糖症ですね、ということで、私は糖質制限食を指導しました。

食事記録をしてもらい、それをみながら細かく指導を行いました。

その女性は一時的にはよくなったが、いまひとつ元気が出ないということで、私は糖質制限の指導を強化しました。

指導に当たって、当時はまだあまり糖質制限ダイエットの本がなかったため、市販の本をいろいろさがしました。

そこで、ある先生の糖質制限ダイエットの本をみてとびつきました。
食事の指導内容が細かく乗っていたからです。
その内容に従ってほとんどそのまま食事内容を指導しました。

今思えば、当時は栄養療法を本格的にはじめて2年目で、毎日の様にいろいろな人の相談を受けるようになり、かなり調子に乗っていました。

当時、私は低血糖症というものがあることを知り、勉強をしはじめたばかりでした。

うつ病=低血糖という勘違い

ある本には低血糖症が精神症状を引き起こすと書いてありました。
うつ病には「糖質のとりすぎ」がいけないとありました。

また、2005年にマイケルレッサー医師が「脳に効く栄養」の日本語版を出版した記念に来日、講演会を聴講しました。

彼は、この著作の中で、
「全ての精神疾患の原因は、低血糖症の海に浮かんでいる」
と発表しています。

このような話を聞いているうちに、私の頭の中では、
うつ病 = 低血糖症 = 糖質制限食が効果的
という誤った、しかし初心者が陥りやすい思い込みができてしまっていたのです。

糖質制限を行った結果

1ヵ月後、その女性は体調がかなり悪くなって来院しました。
体重が減少し、明らかに飢餓状態です。

血液検査では、180位あった総コレステロールの数値が140台に落ちていました。
分子栄養医として、初歩的なミスですが、最初なぜ悪化したのかわかりませんでした。

血中のコレステロールは動脈硬化の指標としての意義が知られています。
コレステロールの7割は肝臓で合成されますが、その量は体内の自動調節機構で、厳重に管理されています。

だから、卵を10個食べても、血中コレステロールは上昇しないし、逆に少しくらい減量しようとしてダイエットしても簡単には落ちません。(だから、多くの人がコレステロールを下げる薬を投与されているのです)

それなのに、これほど数値が下がるということは、体が飢餓状態を察知して防御体勢に入ったことを意味します。

体は減速モードに入ってエネルギー産生のために筋組織を壊し始めます。
この女性は線維筋痛症状がでたり、集中力低下や不眠がでたりしていました。

当時は気がつかなかったのですが、副腎疲労症候群の3期です。

低血糖にも2種類ある

私は治療方針が誤っていたことを伝え、治療方針を転換しました。
多くの先生に意見を聞きながら慎重にことをすすめ、事なきを得ましたが、
回復するまでにかなりの時間を要しました。。。。

それから、私は数百件の糖負荷試験、副腎皮質ホルモンの試験を行い、
低血糖と一言に言っても様々なパターンがあることを学びました。

低血糖症は単に血糖が低いという病気ではありません。
血糖値が保てずに乱高下する病気です。

低血糖症には大きく分けて2つのパターンがあります。

1血糖値を下げる要因が大きいパターン(インスリン過剰分泌)
2血糖値を保つことができないパターン(肝機能低下、コルチゾール低下など)

原因が違うのですから、当然1と2に対しての治療方針は全く違います。
その見極めをすることが低血糖症治療のポイントです。

現在は、低血糖症についての知識を得られるサイトや書籍もかなり豊富にあります。

しかし、それでも、まちがった糖質制限で私の所にくる患者さんはあとを絶ちませんし、栄養療法をやっている先生の中にも、8年前の私と同じ間違いをしている人も少なからずお見受けします。

このような間違いを防ぐこつは、
うつ病 = 低血糖症 = 糖質制限食
と、一律に考えることを捨て、一人ひとりの疾患の根本原因を丁寧に見ていくしかないかな、と思います。

個別の対応が望まれる

確かに、低血糖症ではうつ病の症状を起こすことがある。
そういった意味で うつ病=低血糖症 は正しいことが多いです。

また、一部の低血糖症に対して糖質制限食が有効なことも確かです。

「低血糖症が糖質制限食で改善」という内容の事もインターネットではよく見ます。

そういう意味では 低血糖症=糖質制限食 も場合によっては正しい。

でも、「うつ病=低血糖症」、「低血糖症=糖質制限食」
の表面上の意味だけを解釈して、
「うつ病 = 低血糖症 = 糖質制限食」
という考えを持っている人が多いのです。

これが、うつ病に対して糖質制限食を行い、悪化している人が多い原因ではないかと考えています。

低血糖症は奥が深いです。
糖質制限食の解析の結果、総死亡リスクが優位に増加したという報告もありました。
糖質制限食は特に個人別の指導が大切だと思います。

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