大人の発達障害 ~アスペルガー症候群~

あなたは、大人の発達障害を正しく理解していますか?

一昔前と比べると、インターネットやテレビ等で取り上げられることも多く、「発達障害」という言葉には、視覚的にも聴覚的にも触れる機会が増えていると思います。

しかしながら、言葉を知っていることと、理解していることとは別次元の問題です。言葉だけが一人歩きをして、間違った理解が広まれば、結果的には本人も周囲も苦しむことになります。

この記事では本人も周囲もhappyになるために、「大人の発達障害」、特に「アスペルガー症候群」について、その原因・特徴(症状)・治療(標準医療、代替医療)について解説したいと思います。

 大人になってから発症することがある?

母親の胎内にいる時に形成される「脳」に機能障害が起こる生まれつきの障害であるため、大人になってから気づくことはありますが、大人になってから発症することはありません。
ただし、本人も周囲も障害に気付かないまま大人になり、社会に出てから様々な困難に直面し、「生きづらさ」を感じるようになり、医療機関に受診し、初めて「発達障害」であることを知ることになるケースも少なくありません。

 子どものときにわかれば、治すことができる?

比較的早期(保育園・幼稚園・小学生)に「発達障害」と診断されたとしても、障害そのものを治すことはできません。しかし、早期に障害がわかっていれば、療育(本人及び保護者が毎日安心して生活するための自立支援)によって社会生活への適応能力を高めることができます。

 自閉症とアスペルガー症候群は同じ障害の仲間である?

ADHD(注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害)との関係

現在、「発達障害」を診断する際には、2つ国際的は診基準(①「ICD(国際疾病分類)(ICD-10が最新)」(世界保健機構(WHO)が作成)、②「DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)(DMS-5が最新)」(アメリカ精神医学会が作成)が用いられています。下図はDMS-5に基づいて作成しております。
「自閉症」「アスペルガー症候群」は、自閉症スペクトラムに統合されています。

・学習障害(LD:Learning Disability)・発達性協調運動症
・コミュニケーション症群

「アスペルガー症候群」の特徴(症状)

以下の4つの障害(困難・苦手)が挙げられます。
①社会性の障害
:人の気持ちを読み取ること、ルールやマナーを理解すること、自身の立場をわきまえた行動、人間関係の形成・維持
②言語コミュニケーションの障害
:非言語(相手の感情、表情、身振りの意図、語調等々)コミュニケーションを読み取ること、多様性な意味を持つ言葉を理解すること
③想像力の障害(限定的で反復的な関心と行動)
:変化に対して臨機応変に対応すること(特定の物や事柄にこだわり、同じ言動を繰り返す)、一度に複数の物事を実行すること、妥協すること、計画を立てること
④感覚過敏(五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)がアンバランスで混乱してしまうことがあります)
視覚:蛍光灯の光が目を突き刺すように感じます。
聴覚:小さな音が大音量に聞こえます。
味覚:食べられる食品が限定され、偏食が起こります(食品の食感が苦手であることが偏食の原因であることもあります)
嗅覚:わずかなにおいも感じます。
触覚:本来、心地よい刺激を激痛として感じます(例:シャワーや雨、衣服の素材)

知的障害は伴わない?

自閉症は約75%に知的障害が伴いますが、アスペルガー症候群には一般的に知的障害は伴わないといわれています。

うつ病になることがある?

「アスペルガー症候群」を治す薬や治療法については研究が進められていますが、特効薬はありません。しかしながら、周囲(家庭・地域・学校・職場等々)の「障害」への正しい理解や適切な支援があれば「生きづらさ(孤独・疎外・絶望感)」はかなり軽減されます。すなわち、周囲の無理解・適切な支援が行われなかった場合、「生きづらさ」が増し、二次障害(「発達障害」がもとになって新たに引き起こされる障害)を引き起こし、うつ病(またはうつ状態)になってしまう可能性もあります。

絶対に努力して克服しなければならない?

「アスペルガー症候群」は外見からは理解しにくく、障害の現れ方も一人ひとり異なるため、周囲から「本人の努力が足りない」などと非難されてしまうこともありますが、それは明らかに間違った認識です。生まれつき脳機能に障害があるため、本人の努力で克服できるものではありません。障害について本人及び周囲が正しく理解することが最も重要です。

 犯罪の原因になることもある?

「アスペルガー症候群」が犯罪の直接的な原因になることはありません。しかし、「障害」に対する周囲の無理解が継続的に続く環境であれば、「生きづらさ(自分を理解してくれないことへの怒り)」が増し、反社会的な行動(犯罪)につながってしまうこともあります。だた、こうしたことは障害の有無にかかわらず起こり得る問題であることは言うまでもありません。

ひきこもりと言われていることがある?

「アスペルガー症候群」が、ひきこもりの直接的な原因になることはありません。しかし、「うつ病」「犯罪」のケースと同様に、障害に対する周囲の無理解が継続的に続く環境であれば、「生きづらさ(自己評価・自己肯定感の著しい低下)」が増し、ひきこもってしまうこともあります。ただ、ひきこもりについても、障害の有無にかかわらず起こり得る問題であると考えるべきです。

 ふつうに仕事をすることはできないの?

「障害」があるから普通に仕事ができないということは決してありません。自分にあった仕事を選択し、周囲の理解と適切な支援を得られれば社会で活躍できます。
発達障害であることを公言し、社会で活躍されている方々(市川 拓司氏(作家)、星野 仁彦氏(精神科医)、渥美 由喜氏(ダイバーシティ・コンサルタント)、深瀬 慧氏(SEKAI NO OWARI ボーカル)等々)はたくさんおられます。
現在、社会に求められているのは多様性です。障害があっても、自分の強みを活かせる環境(職種・周囲の理解サポート)があれば活躍できる可能性は十分にあります。

一般的な治療(標準医療)と代替医療

繰り返しになりますが、「アスペルガー症候群」を治す特効薬は現段階ではありません。したがって、「二次障害」を引き起こさないようにする、すなわち「障害」による「生きづらさ」を軽減するために以下の3つ治療が行われています。

一般的な治療(標準医療)

①薬物療法(抗うつ薬、抗精神薬、気分安定薬)
:本人が「苦しい」「つらい」と感じている症状を改善する治療
*今後の治療法として、「オキシトシン」というホルモンによる治療の研究も注目されています。
②精神(心理)療法(個人精神療法(日記療法、カウンセリング、認知行動療法)、集団精神療法(ソーシャル・スキル・トレーニング SST、デイケア))
個人精神療法:対話を通して精神面に働きかける治療
集団精神療法:日常生活に必要なスキルを集団で学んだり、対話・行動を通してお互いの悩みを共有し、自己及び他者理解を深めたりしていく治療

③環境調整(家庭及び職場環境・生活リズム及び食生活の改善)
:その人の「障害」の特性に合った環境調整をすることでストレスを軽減する治療

その他の治療(補完代替医療(Complementary & Alternative Medicine CAM))

①手技療法と身体技法(Manipulative & Body-based Practice)
:マッサージ、カイロプラクティック、リフレクソロジーなど、
②心身医療(Mind-Body Medicine)
:ヨガ、瞑想、心理・精神療法、芸術療法、音楽療法など
③独自の理論体系を持つ医療(Whole Medical System):
:アーユルベーダー、中国伝統医学、ホメオパシーなど
④エネルギー療法(Energy Medicine)
:気功、レイキ、電磁療法など
⑤生物学的療法(Biologically Based Practices)
:ハーブ、サプリメント、特殊食品に代表されるものがあり、最も多用されています。
(大阪大学大学院 医学研究科 統合医療学寄付講座のホームページより引用)

 栄養(食事・サプリメント)を用いた治療

味覚・嗅覚・食感の過敏により、偏食を引き起こし、そのことが栄養の偏りはもとより精神面にも影響を与え、さらには「感覚過敏」を助長させるという悪循環も引き起こしています。

例えば、亜鉛の欠乏による味覚障害、鉄分・ビタミンB群・葉酸の不足によるうつ状態、炭水化物の過剰摂取による反応性低血糖(詳細は本ページの「機能性低血糖症」をお読み下さい)等々が挙げられます。

そして「偏食」が続くことにより、下記のように最終的に「二次障害」を発症してしまう可能性があります。

アスペルガー症候群の特徴「感覚過敏」➡「偏食」➡「感覚過敏」の助長・「心身の健康」の阻害➡「二次障害」の発症

こうした「二次障害」の発症を防ぐ方法の1つが、栄養(食事・サプリメント)を用いた治療になります。

「偏食」によりダメージを受けた胃腸の治療を行い、必要な栄養素を吸収できる身体を取り戻した上で、栄養バランスのとれた食事、及びサプリメント(食事だけでは不十分な栄養素を補う)を用いることによって、「二次障害」を防げる可能性があるのです。

しかしながら、障害の現れ方も食生活も一人ひとり異なります。よって、個々の栄養状態を正確に掌握することが治療の大前提となります。
栄養療法に精通した専門家(医師・栄養士・カウンセラー)は、血液検査で得られた個別のデータに基づいて、詳細な分析を行い、個別の治療方針をたてていきます。

主に、4つの方針(①体の炎症を抑える ②腸内悪性菌、カンジタ除去 ③重金属デトックス ④神経伝達物質調整)に基づいた治療が行われます。

※治療の順序は、個々の心身の状態、治療者の考え方によって変わってきます。
「二次障害」を防ぎ、安心して継続的に社会で活躍していくためにも、客観的なデータ(血液検査他)に基づいて栄養面から心身をサポートしてくれる(何でも相談できる)専門家は、本人及びその家族にとって有意義な存在となり得るでしょう。

食事・サプリメントの効果は、個人差が大きいので、上記で述べたように、客観的なデータに基づいて専門家と相談をしながら、計画を立てて実践していくことをお勧めしますが、ここででは一般論として、「脳」に優しい食生活を考えてみたいと思います。

・ファーストフード、加工食品の摂り過ぎは、カロリーオーバー及び必要とされる栄養素の不足を招きます。
・カフェインの摂り過ぎは、抗ストレスホルモンを体内で生成できなくなります。
・アルコールの摂り過ぎは、「脳」を含む全身のさまざまな臓器にも障害を引き起こします。
・「脳」の健康にはビタミンやミネラルが非常に重要です(これらが不足すると、脳内の神経伝達物質のアンバランスが起こり、不安・イライラ・集中力低下等を引き起こします)

積極的に摂ってほしい栄養素ベスト10は以下になります。

①ビタミンB1
:肉類(豚肉◎)、レバー、穀物の胚芽(玄米) 、豆類等
②ビタミンB2
:肉類、魚(鮭◎) 、レバー、鶏卵、乳製品、納豆(大豆)等
③ビタミンB5(パントテン酸)
:豆類(納豆)、レバー、鶏肉等
④ビタミンB6(ピリドキシン)
:まぐろ、かつお、レバー、にんにく等
⑤ビタミンB12(コバラミン)
:小麦胚芽、レバー、酵母、イモ類、緑黄色野菜、魚類等
⑥ビタミンB9(葉酸)
:魚(鮭◎ ) 、貝(しじみ、あさり) 、レバー等
⑦ビタミンC
:新鮮な緑黄色野菜、果物(柑橘類など)等
⑧カルシウム
:乳製品、小魚、豆類、緑黄色野菜、海藻等
⑨マグネシウム
:海産物(海の塩、海藻類)、豆腐、豆類、小麦胚芽、緑黄色野菜等
⑩亜鉛
:レバー、肉類、貝類等

慣れ親しんだ食生活を変えるのは、決して簡単なことはでないかもしれません。しかし、「脳」が、栄養不足の影響を最も受けやすい臓器であることは、既に現代医学によって証明されています。であるならば、副作用なく安全に実践できる「食生活の改善」を試みてみることは、大いに価値のあることではないでしょうか。

【参考文献】
宮尾 益知(2017)『大人の発達障害』
林 寧哲(2015)『これでわかる大人の発達障害』
備瀬 哲弘(2015)『大人の発達障害』
加藤 進昌(2012)『大人のアスペルガー症候群』
星野 仁彦(2011)『「空気が読めない」という病 大人の発達障害の真実』
上野 和彦・市川 宏伸(2010)『図解よくわかる 大人のアスペルガー症候群』

 

作成者:臨床分子栄養医学研究会 認定カウンセラー ライター中村

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